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プレシャス・ウォッチ

アール・デコ 第1期

1895年から現代まで

1910

カバンの留め具に組み込まれた時計

1910年から1925年頃にかけてのアール・デコ期の装飾は、明確なフォルムと色彩が特徴です。ダイヤモンドとオニキス 、またはダイヤモンドとサンゴとロッククリスタルなど、近代ジュエリーに使用される石を組み合わせて明確な幾何学模様を構成し、滑らかな仕上げられた表面を光が滑っていきます。またアール・デコ期の特徴として、単色の不透明エナメルを用いてブロックを埋めたり、またモチーフの輪郭を強調したりする方法が見られます。製作者達はインドや東洋の作品から多大なインスピレーションを受けました。それがブローチウォッチやペンダントウォッチ、懐中時計の装飾に反映されています。中でも「トゥッティ・フルッティ」と呼ばれているものは、1920年代初頭から1930年代の終わりまでを通して見られたスタイルです。これはイスラム教の様式やインドのヒンズー様式から着想を得たもので、主にインドから取り寄せたルビー、サファイヤ、エメラルドなどを加工し、それらをダイヤモンドと共にちりばめて花や葉、そして果物が表現されています。カルティエ、モーブッサン、アーノルド・オステルターグら著名なパリのジュエラー達が、卓越した作品を残しています。

宝石のバゲットカットが登場した事も、1925年以降のアール・デコに大きな影響を与えました。従来では作品の形状には制約があって平面的にならざるを得なかったのが、これによってより立体的なフォルムを実現出来る様になったのです。バゲットカットの石は、バゲット型の腕時計にぴったりフィットします。その最初の例となるのが、ジョルジュとアンリのヴェルジェ兄弟が製作した時計で、ヴァシュロン・コンスタンタンが大戦中に製作したムーブメントを使用しています。その形状の比率を見ると、長辺となる縦幅が横幅の3倍はあります。この新しいフォルムは世界中で好評を博し、1930年代の終わり頃までもてはやされました。時計の機構面では、ジャガーがリュウズを裏ブタ側に配置したムーブメントを製作しました。最初は1層のムーブメントでしたが、1924年以降は2層に改良されています。ムーブメントの小型化はさらに進み、 ジャガー・ルクルトは1929年に世界最小のキャリバー101を発表しました。これを使ったジュエリーモデルでは、バゲット型の時計にバゲットカット・ダイヤモンドをセットしています。また当時はナベット型の時計も流行し、これにはもちろんナベットカットのダイヤモンドがセットされています。

ヴェルジェ兄弟の作品は、当時のジュエリー界や時計界の名だたる高級メゾンに採用されました。中でもヴァシュロン・コンスタンタンは、彼らの作品を多く採用しています。バゲット型の時計、シャッターの付いた時計、バッグに仕込んだ時計、ブローチ時計など、全て彼ら独自の作品で、中には日本の影響を受けて漆を用いたものもあります。

ヴェルジェ兄弟の主な顧客は下記の通りです。

  • パリのジュエラー:ブシュロン、カルティエ、ショーメ、ラ・クロシュ・フレール、フーケ、ジャネシク、モーブッサン、オステルターグ、ヴァンクリーフ
  • アメリカのジュエラー:ブラック、スター&フォレスト、チャールトン、J.E. カルドウェル、スポルディング、ティファニー、トラベルト&ホッファー
  • スペインのジュエラー:マルゾ

    イタリア・スイスのジュエラー:ブルガリ、ギュブラン

  • 時計ブランド:ボーム&メルシエ、ブレゲ、ジャガー・ルクルト、ヴァシュロン・コンスタンタン 
  • 装飾品ブランド:ダンヒル、エルメス

1920年代のジュエリーウォッチはきらびやかで凝ったものが多く、イブニングウェアの一部として用いられるようになりました。しかしエチケットの面では、女性がレセプションの最中に時計を見る事は失礼に当たるとされていた時代の事です。そのため時計の文字盤は、宝石の付いたカバーで隠されていたり、ペンダントやシャトレーンならば裏側にあったり、また蝋印の付いた時計ではその内側に隠されていたりします。

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