ムーブメントの装飾とエングレービング

Credits: 地板のサーキュラーグレイン

時計のムーブメントの多くは、湿気や埃から守るためにケースに収められていて見る事が出来ません。しかし中には裏ブタがシースルーになっていて、複雑な輪列の配置やブリッジなどの機構が見えるようになっているものもあります。

しかしムーブメントの小さな積み重なった部品が、外装に劣らない位に装飾され、仕上げられている事に誰が気付くでしょう?

例え裏ブタがシースルーになっていなくても、また隠された美しいムーブメントを見る事を出来るのが時計師だけであったとしても、高級時計のムーブメントというものは美しく装飾されているものです。

どうしてこの様な手間をかけるのでしょうか?どうしてこの一見無駄に見える事にこだわるのでしょうか?

時計のムーブメントはそれぞれに辛抱強く組立てられ、調整され、そして検査されています。各部品に対する異常なまでのこだわりはもはや美観の問題だけでなく、完璧な技術を証明するものなのです。そうでなければラフな部品を磨き、エングレービングを施し、装飾を施す事に誰が膨大な時間を費やすでしょうか?個々の部品は整形を終えた後の検査に合格しなければ、次のステップである装飾と組立てに進む事が出来ません。例え誰の目にも触れる事のないムーブメントであっても、最上級に美しく仕上げられているのです。

繊細かつ複雑な仕上げと装飾が最もはっきり見えるのが、ムーブメントの美しさと複雑な構造をオープンにしたスケルトンウォッチでしょう。そこには時計師の美意識が如実に表れています。

高級時計のムーブメントの場合、各部品の表面には機械加工によるほんの少しの跡も残っていてはいけません。歯車,や極小のカナであっても滑らかに仕上げられ、ポリッシュ、サーキュラーグレイン、面取りなどの仕上げが行われています。その作業には特殊なノウハウを要し、数世紀もの間変わらない伝統的な工具が用いられます。

仕上げには様々な技法がありますが、まず部品の表面とエッジを磨く事から始まります。これには器用な手先が必要で、研磨剤を用いて金属の表面を磨きます。 仕上げの技法によって部品の見た目はもちろん、その模様や質感、光の反射具合までも変化します。

  • 鏡面仕上げは金属表面に輝きを与えます。

  • サテン仕上げはより柔らかな艶を与えます。

  • 筋目仕上げは金属表面に細かな筋を入れます。

  • ペルラージュやサンバースト仕上げは独特の光の反射をもたらします。


エッジを面取りして磨かれた部品は、それ自体がアートと言えます。光の反射を受けて輝く様はまさに芸術と言えますが、しかし鏡面に磨かれ面取りされた部品は強度が増すと共に腐食に対して強くなる、という実用的な面もあるのです。

ブリッジなどの大きな部品の表面は、ツゲの木で作られたパッドと旋盤を使って均等な幅で平行に筋目が入れられます。

これは縦に入れるものと円状に入れるものがあり、「コート・ド・ジュネーブ」がその一例です。

中には手作業によって溝を彫ったりエングレービングしたりする場合もあります。エングレーバーは卓越した技術を駆使して金属の表面を彫り、文様を作っていきます。その結果、ムーブメント全体に一目で高級と分かるエレガンスと躍動感が与えられます。

エングレーバー

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